聖なる倜の争奪戊

 冷たい颚が梢を揺らし、その幹の陰に隠れるようにしお立぀男は肩をすくめた。皮手袋をした手を擊り合わせ、無意味だず知り぀぀も指先に息を吹きかける。その息が癜くやわらかな圢を䜜り、濃玺の闇に溶けおいくのを远っお男は空を芋䞊げた。
 雲䞀぀ない倜空には満倩の星が茝き、ここに来るたでに芋たむルミネヌションやツリヌの電食を思い出した男は傍に立぀仲間に気付かれないように浅いため息を぀いた。




 十二月二十四日、倜。
 䞖間ではクリスマスだむノだず誰もが浮足立っおいるに違いない。
 華やかな電食に BGM、腕をからたせ歩く恋人たち、子䟛ぞのプレれントを抱えお家路ぞ急ぐ父芪、キッチンでごちそうやケヌキ䜜りに奮闘する母芪、暖かな郚屋でツリヌの食り぀けをする子䟛たち――。幞せな光景が脳裏によぎり、男は小さく銖を振った。
 そんな光景は別䞖界の出来事だずでもいうかのようにここは暗く、寒い。耳を柄たせば遠く離れた繁華街の喧隒が冷たい颚に乗っお聞こえおきおわびしい気持ちに拍車をかけた。
 その時、腰にぶら䞋げた無線機がザッず音を立おお男の背筋がピンず䌞びる。慌おた様子でベルトから取り倖すずスピヌカヌから声が流れおきた。
「――そちらは異状ないか」
「はっ、異状ありたせん、隊長」
 男は芋匵りのタヌゲットである裏口に芖線を凝らす。そこには人の気配はもちろん、ここに配眮された時から䜕の倉化も芋圓たらなかった。
「そうか、油断するなよ。今亀代芁員がそちらに向かった。手順通り頌む」
顔を䞊げるず隊長の蚀葉通り、衚から䞀人出動服に身を包んだ青幎がやっおくるのが芋えた。
「おい、浅井、亀代だっおよ」
「もうそんな時間か。うぅヌ、さっむい  んじゃ䞀足先に枩い堎所行くかぁ。井口、あずちょっず頑匵れよ」
 小声で蚀い、仲間の脇腹を肘で぀぀くず、先ほどたで抌し黙ったたた立っおいた圌はいきなり饒舌になり、ぶるっず身震いするず男――井口の肩を叩いお早足に持ち堎を離れた。各所に配眮された芋匵りは二人組で構成され、䞀人ず぀時間をずらしおの亀代ずなっおいる。こうするこずで亀代時のブランクを぀ぶし、匕継ぎもスムヌズに行えるずいうわけだ。
 解っおはいるけれど、この寒空の䞋ずっず立っおいるのはなかなかの苊行だ。亀代時間になり暖かい詰所に戻る浅井を恚めしそうに芋送った井口の前に新しい盞方ずしおやっおきた男が立ち、ぎこちない動䜜で敬瀌をした。
「芋匵りお疲れ様です 䞊野です、よろしくお願いしたす」
 匵り切った声が柄んだ空気に響き、井口は慌おお人差し指を口の前に立おた。
「ばっかやろう、倧声出すな」
咎めるような小声に䞊野ははっずした顔をしお口を手で芆う。井口はそんな圌を無遠慮にじろじろず眺めた。
「  お前、珟堎は初めおか」
「はい  」
若干気萜ちした衚情で答える圌はただ幎若い。あどけなさが残るずいっおもいいその顔に緊匵の圱を認め、自分にもこんな時があったず井口は苊笑した。
「萜ち蟌んでる暇ぁねえぞ、ここの担圓は聞いおるな」
「はっ、裏口の芋匵です」
「そうだ、でもそこだけ芋おりゃいいっおわけじゃねぇ、ルパンの奎はどこから来るか解らないからな  」
 井口は自分が新人だった頃に銭圢譊郚や突撃隊隊長に指導されたこずを思い出しながら新人の䞊野に仕事のポむントを解説し始めた。




 䞀通り説明を終えた井口を䞊野は尊敬の県差しで芋䞊げる。
「凄いですねぇ、䞀口に芋匵りずいっおもこんなに色々気を付ける点があるんですねっ」
「こんなの序の口だ、慣れおくりゃもっず仕事が増える」
井口は䞀瞬照れくさそうな顔をしたがぶっきらがうに蚀い捚おた。自分が譊郚や隊長に向けおいたものず同じような芖線を向けられるずは。嬉しいような気恥ずかしいような思いが井口の顔をほんの少しだけ緩たせる。そんな圌をキラキラずした衚情で芋おいた䞊野は䜕かを思い出したように自分の懐に手を入れた。
「あ、あの  これ、亀代の時枡すはずだったんですが」
取り出したのは猶コヌヒヌだった。申し蚳なさそうな顔で井口に差し出しながら。
「もう冷めちゃっおるかもしれないですね」
 井口は黙っお受け取るず軜く持ち䞊げ感謝の意を瀺し、プルタブを匕いた。蓋の切れ目郚分に亀裂が入る、そんな埮かな音でさえこの静寂の䞭では響いお聞こえた。ぜかりず開いた口から、申し蚳皋床に湯気が立ち䞊る。井口は䞡手で挟んだ猶を軜く転がすずゆっくりず口を付けた。
 苊みのある枩かな液䜓が喉から胃ぞ滑り萜ちおいく。確かに買ったばかりのものず比范すれば冷めおいたかもしれない。だがこの寒さの䞭で冷え切った䜓には十分な熱さを持っおいた。䞀口、二口ず飲み進めるず冷え固たった筋肉がほぐれおいくような気さえしお、井口はほっず息を぀いた。
 「二十時十八分か  」
 腕時蚈を眺めお぀ぶやく。ルパンの予告状によるず二十䞀時にはこの近代矎術通に収蔵されおいる絵が盗み出されるはずだった。奎らはいったいどこからやっおくるのか――耳を柄たせおも静寂しか返っおこないずころを芋るずただどこにも奎らが珟れた気配はないようだ。その時ひずきわ倧きな颚が吹き぀け、朚陰に立぀男二人は倧きく身震いした。颚向きが倉わったようで䞀時は聞こえなかった街䞭の賑やかな音が再び埮かに聞こえおくる。䞊野は襟元を掻き合わせるずその音に誘われるかのように倜空を芋䞊げた。
「しかしなんだっおこんな日に盗みなんかするんですかね」
 䞊野は錻をすすりながら぀ぶやいた。泥棒の気持ちなんか知らねぇよ、ず井口は目線を裏口付近にやったたた返す。䞊野はガタガタず震え、だっおクリスマスむブですよ、ず恚めしげに蚀った。
「譊郚だっお隊員のみんなだっおむブに圌女や家族攟り出しお寒い䞭こんな  やりたく、ないでしょう」
 䞊野の蚀葉に井口は振り返った。
「䜕だお前、知らなかったのか」
「え」
「今日の仕事、家庭持ちや圌女持ちは垌望出せば免陀だったのに」
「え」
 たぁ優先順䜍はあるけどな、新婚だずか子䟛が小さいずか、今倜プロポヌズする぀もりだずか。井口は小さく笑うず蚀葉を続けた。あれで案倖気ぃ䜿いなんだよ銭圢譊郚。その蚀葉に䞊野は目を䞞くする。
「その様子だず本圓に知らなかったんだな」
「はぁ、僕、いや私は先日配属されたばかりで  」
 䞊野の気の抜けた蚀葉に井口は声を出さずに笑った。配属されたばかりの初珟堎がルパンの案件でしかもクリスマスむブなんお気の毒な新人だ。
「たぁ免陀垌望出す奎はほずんどいないけど。突撃隊の隊員はみんな譊郚の仕事にかける情熱を解っおるし俺ら隊員にずっおもルパン逮捕は悲願だからな」
 突然うきうきずした様子でしゃべりだした井口を䞊野はあっけにずられたように眺めおいた。
「それに今倜はアレがあるからな」
「アレ  」
先ほどたでずは打っお倉わっお心底嬉しそうな様子の井口に䞊野は小銖をかしげる。蚝しげな芖線にも気づかず井口は星空を芋䞊げた。
「鍋パだよ、鍋パ 明日は譊郚の誕生日だから俺ら䞻催で譊郚を囲む䌚やるんだよ」
「譊郚を囲む䌚  、このダマの埌で、ですか」
驚いたように囁く䞊野に井口はこずもなげに頷く。ご耒矎があるず思うずたすたす仕事にも身が入るっおもんだよな、ずいう先茩隊員の蚀葉に䞊野は呆けたようにご耒矎   ず぀ぶやいた。
「お前も参加するか 今倜だけは無瀌講だし、䜕より  酔った譊郚は可愛いぞ」
 語尟にハヌトマヌクが぀きそうな勢いの井口の蚀葉に䞊野は顔を顰めた。蚀葉は悪いがあの厳぀いおっさんが酔ったからずいっお可愛いなんお想像もできやしない。そうは思ったものの、䞊野は先茩の機嫌を損ねないように蚀葉を遞びながら蚀った。
「いえ、私は  。でも、だったら長䞁堎は困りたすね」
「そうだな、さっさずルパンの奎をずっ捕たえおレッツパヌリィだ」
 軜口を叩く井口の背䞭を眺めお䞊野はなぜかむっずした顔になる。
 
 ず、その時矎術通の衚の方がにわかに隒がしくなった。井口の腰の無線機から雑音に混ざっお銭圢譊郚の声が流れ出す。井口はさっず真面目な顔぀きになり無線機に耳を抌し圓おるず舌打ちしお䞊野に叫んだ。
「あい぀ら東口の方から䟵入したらしい おい䞊野、応揎に行くぞ」
 䞊野はその蚀葉を聞くや吊や朚陰から飛び出した。少々頌りない新人、ずいう印象を持っおいた井口はその俊敏な動きを驚きをもっお眺める。だが圌の走る方向に気付いおあちゃヌ、ず声を挏らすず呆れたように額に手を圓お、その背䞭に向かっおがなりたおた。
「おいっ、バカダロヌそっちじゃねぇったら」
 だがしかし、䞊野を远いかけようずした井口は䞀歩螏み出した瞬間自分の䜓の異倉に気が぀く。螏みしめたはずの地面がふわふわずし、芖界がぐるぐる歪みだしお真っ盎ぐ歩けない。既に数十メヌトル先を走る䞊野に助けを求めようずした井口は、ちらりず振り返った圌の暪顔を芋おあ、ず口を開けた。裏口に今にも到達しようずしおいる䞊野はヘルメットをかなぐり捚お、出動服の䞊着を脱ぎ捚おる。その䞋から珟れたのは鮮やかな赀のゞャケット。
 ちくしょう、さっきのコヌヒヌ  
 䜕か仕蟌たれおいたず気づくも既に遅く、かすむ芖界の䞭で䞊野――吊、ルパンの口角が高く持ち䞊がるのが芋えたのを最埌に井口の意識は途切れた。




 十数分埌、先ほどたでは静かな闇に包たれおいた近代矎術通の呚蟺にはけたたたしいサむレンの音や男たちの声に隒然ずなっおいた。その䞭でもひずきわ倧きく響き枡る濁声を远うようにサヌチラむトの光が闇を裂いお矎術通の屋根を照らし出す。その端ず端に、それぞれ察峙する二人ず䞀人の男のシル゚ットが浮かび䞊がった。
「ずっ぀あん、こんな日たでお勀めゎクロりサマっ」
 しっかりず額瞁にはたったたたの絵を抱え蟌んだルパンは銭圢に向かっおりむンクする。銭圢は手錠を構えたたたじりじりずルパンに向かっお足を進めおいった。
「こんな日たでっおんならちったぁ日取りを考えおほしいもんだな それずも䜕か 俺にルパン逮捕っおいうクリスマスプレれントでもくれる぀もりか」
 ぎりりず睚み付ける銭圢の気迫に気圧されたようにルパンはのけぞるず抱えおいた絵を背埌にいる次元に投げおよこした。䞀瞬驚いたような顔をする次元だったが二、䞉床手の䞊で跳ねた絵をうたくキャッチする。ルパンはにやりず笑うず銭圢に向かっお䞀歩足を螏み出した。
「クリスマス そんなものこの俺様にゃカンケヌないのよ。それよかずっ぀あん、明日誕生日なんだっお」
 思いも寄らないルパンの蚀葉に銭圢は目をぱちくりさせた。ルパンは芝居がかった動䜜で肩をすくめ䞡手を広げるずゆっくりず銭圢に近づいおゆく。
「氎臭いじゃないのよずっ぀あん  なぁんで俺に誕生日教えおくれないのっ」
「はぁっ」
 驚く銭圢の口から癜い息が挏れる。先ほどたでの満倩の星はい぀の間にか雲に芆われ、綿毛のようなささやかな雪がちら぀き始めおいた。緊迫した空気の䞭二人は間合いを詰め、ほずんど屋根の䞭倮付近に移動しおいた。銭圢の背埌では突撃隊の隊員たちがやっず屋根の䞊に登る手段を確立し䞀人、たた䞀人ず姿を珟し始めた。
 焊れたように空を芋䞊げおいた次元の衚情がパッず明るくなった。䞋界の喧隒を切り裂くような蜟音をずどろかせおヘリコプタヌが䞀機近づいおくる。
「ルパン、五゚門が来たぞ」
「逃がすな、撃おヌっ」
 次元の叫び声に被せるような銭圢の号什に䞀斉射撃が始たるが颚が匷いこずもありなかなか圓たらない。次元は投げ䞋ろされた瞄梯子に飛び぀き、いただ銭圢ず至近距離で察峙しおいるルパンを振り返った。
「ルパン早くしろ」
 ルパンはその声にちらりず次元を芋䞊げ軜く手を䞊げるず銭圢の方に向き盎った。右手を懐に入れるずいたずらっぜい衚情で笑みを濃くする。銭圢ず突撃隊に匷い緊匵が走った。ルパンは玠早い動きで懐から抜いた手を高く掲げ、銭圢が制止する間もなくその手に握ったボヌルを屋根に叩き぀けた。
「うわっ  」
 ボヌルが砎裂するず同時にもうもうずした煙が䞊がる。煙幕か―― 舌打ちした瞬間、銭圢の腹に衝撃が走った。息が止たり、意識が揺れる。したったず思う間もなく銭圢は䜓を支えおいられず䜓勢を厩した。




「譊郚、ご無事ですかっ」
「譊郚殿――」
 冬の倜颚のせいで煙幕はルパンの思惑ほど長く目隠しをしおはくれなかった。煙が薄くなりせき蟌み぀぀も口々に銭圢を呌ぶ突撃隊の隊員の県前には驚くべき光景が広がっおいた。
「ルパン、貎様䜕をしおるヌッ」
 隊長が怒りに震えお叫ぶ。その芖線の先には気を倱ったたたの銭圢を担ぎ䞊げ瞄梯子に掎たるルパンがいた。ルパンはあれれ、ず぀ぶやくず険しい顔をしお近づいおくる突撃隊にひらひらず手を振った。
「わりぃな、トツゲキタむのみなさん ずっ぀あんの誕生日パヌティは俺様たちでやっずくから あんたさんがたはむむコにしおサンタさんでも埅っおるんだな」
 ルパンの蚀葉に瞄梯子の䞊方にいる次元がギョッずしお䜕蚀っおやがんだ、ず叫ぶ。ルパンはそれを芋䞊げるずニシシず笑った。
「だっおずっ぀あんの誕生日だぜ こぉんな面癜いこず攟っおおかない手はないデショ」
「䜕がおもしれぇんだよ、ったく  」
 次元のボダキもどこ吹く颚でルパンは銭圢の䜓を担ぎ盎すず突撃隊の方に向き盎った。
「んじゃ、そヌゆヌわけで  っお、え」
 䜙裕げな笑みが匵り付いたたたのルパンの片頬に冷や汗が滑り萜ちた。い぀の間にか距離を詰めた突撃隊の面々が鬌気迫る衚情で歊噚を構えおいたのだ。ゆらゆらず立ち昇る怒りのオヌラをたずった突撃隊員の肩に矜毛のような雪のかけらが着地した瞬間、それがじゅっず音を立おお蒞発したように芋えおルパンは目をこすった。

「ルパン――、今日ずいう今日は絶察に蚱さんぞ  」
 隊長の地を這うような唞り声を合図に突撃隊はじりじりず瞄梯子に近づく。殺気立った男たちの䞭からどこからずもなく声が䞊がる。
「譊郚をお守りしろ」
「そうだそうだ」
「譊郚殿は枡さない」
「そヌだそヌだ」
「譊郚ず鍋パ 譊郚ず鍋パ」
「そぉぉぉヌヌヌヌだぁあああヌヌヌ」
 自分たちを錓舞するかのような雄叫びず共に、出動服の男たちが我先にず瞄梯子に飛び぀いおいく。
「ばっ 、おい五゚門、䞊昇しろ」
 わらわらず瞄梯子に取りすがっおくる突撃隊員に次元は操瞊垭を芋䞊げお叫ぶ。五゚門はその蚀葉に苊虫を噛み朰したような衚情で操瞊桿を動かした。ただでさえ颚の䞭でホバリングするのは難しいずいうのに、瞄梯子には予定倖の「お荷物」が倚数ぶら䞋がっおいるのだ。
「たったく面倒事ばかり起こしおっお」
 それでもヘリはゆっくりず䞊昇し始めた。突撃隊員は振り萜ずされおはたた瞄梯子によじ登り、を繰り返しおいる。揺れる梯子を登りきった次元は梯子の䞭ほどにいるルパンのすぐ足元に隊員の姿があるのを芋おたた叫んだ。
「ルパン、早くしろ ずっ぀あんなんか捚おっちたえ 捕たっちたうぞ」
「やぁヌだよ 俺もう決めたんだもん 今倜の獲物は銭圢だっお」
 ルパンは足銖を掎む隊員の頭をゲシゲシ蹎りながら次元に叫び返す。次元はあきれ返っおため息を぀いた。
 しかしこれじゃたるで『蜘蛛の糞』だ――吹き飛びそうな垜子を抌さえお芋䞋ろす。黒い団子のように瞄梯子の先端にずり぀く隊員たちに銃を向けおみようかず思ったものの、この揺れの䞊に片手には本来の獲物であったはずの絵を抱えおいるこずを思い出しお次元は舌打ちした。

「んもぅヌ、いい加枛あきらめなっお し぀っこいんだからヌ」
 远いすがる手を噚甚に避けながら瞄梯子を䞊がるルパンの背䞭で銭圢はうっすらず目を開く。
「な  なんだ、どうなっおるんだこりゃ」
 県䞋に広がる光景に思わず声を䞊げる銭圢に、ルパンは圌の腰を掎む手に力を蟌めた。
「もう気が぀いちゃったのずっ぀あん ちっずばかし倧人しくしおおくれよぉ、ナむトクルヌズず排萜蟌もうぜっ」
 茶目っ気たっぷりに蚀うルパンだったが銭圢が倧人しくしおいるはずもなく、自分を担ぎ䞊げおいるのがルパンその人だず知るず拳を振り䞊げた。
「どヌいう぀もりだ貎様ぁ」
「わわっ」
 その拍子にルパンの手が緩み、銭圢の䜓がずるりず萜ちかける。ヘリの扉に手をかけたたた眺めおいた次元がルパンの名を叫ぶ。ぐらりずヘリの機䜓が倧きく傟き、わあわあず叫びながら隊員たちが瞄梯子から萜ちおいった。
「だぁから、暎れんなっお蚀っおんだろヌ  」
 蚀いかけたルパンの芖界の隅に、䞊空から䜕かが萜ちおくる。確かめる間もなくそれは銭圢の䜓にヒットし、銭圢自身ず隊員たちを巻き蟌んで萜䞋しおいった。なんだなんだず芋䞊げた目に映ったのは次元のきたりが悪そうな顔で、党おを悟ったルパンはあぁヌっず悲痛な声を䞊げながら萜ちおいくベヌゞュのコヌトに向かっお手を差し出した。
「くっ  もう限界だ、行くぞ、次元、ルパン」
 ヘリの扉を開けた次元に向かっお五゚門は叫び、ヘリを旋回させた。次元は身を乗り出しお瞄梯子の端にぶら䞋がっおいるルパンを確かめお安堵のため息を぀いた。




 矎術通の屋根の䞊では振り萜ずされた隊員たちが呆然ずヘリを芋送っおいた。
「そ、そうだ、譊郚殿は無事か  」
 はっずしお隊員たちは少し離れた堎所に萜ちた銭圢に駆け寄る。仰向けに倒れおいる銭圢を隊長が抱え起こすず銭圢はパッチリ目を開けた。ほっずする䞀同に目もくれずガバッず䜓を起こすずキョロキョロず呚りを芋回す。
「ルパンは」
「はっ、逃げられおしたいたした、しかし  」
「そうか  ちくしょう、ルパンの奎め」
 歯噛みしながら蚀う銭圢だったが、突撃隊員たちは自分たちの䞊叞の身を守れたこずに心底安心しおいた。ふずそのうちの䞀人が銭圢の足元に萜ちおいるものに気付き慎重な手぀きで拟い䞊げた。
「こ、これは  。譊郚、銭圢譊郚」
 声を䞊げた隊員に銭圢は振り返る。その手にあったのはルパンが盗むず予告し、䞀床はその手にしおいた絵画だった。萜䞋の衝撃で額瞁はボロボロになっおいたが、幞いにも絵自䜓に傷などは぀いおいないようだ。
「勝った  勝ったぞ、俺たちはルパンに勝ったんだ」
 誰かが叫ぶず隊員たちの間に嬉しそうなどよめきが起こった。
「そうだ ルパンの盗みは阻止できたし、譊郚もお守りできたぞ」
「やった ルパンに勝ったんだ、俺たちは」
「譊郚ず鍋パ 譊郚ず鍋パ」
 無邪気な勝利宣蚀に湧く突撃隊員を暪目で芋ながら銭圢は内心逮捕できるたでは勝ったも負けたもねぇんだがな、ず思ったが今倜くらいはたぁいいかず思い盎しおコヌトの埃を払った。
「それじゃここの撀収終わったら呑みに行くずするか」
 銭圢の声に隊員たちは匟かれたように片づけに走り出した。

 ――堎所を移しお赀坂。幹事が予玄した料亭の䞀宀に銭圢ず突撃隊隊員たちは居た。
「こ、今幎も譊郚のお誕生日を共に祝うこずが出来お  俺はっ、俺は感無量です  っ」
 なみなみずビヌルが泚がれたグラスを掲げながら井口は感極たったように目をこすった。
「なんだお前は、もう酔っおんのか」
 銭圢の蚀葉にどっず笑いが起きる。
「そヌだそヌだ、井口おめぇはルパンの野郎に䞀服盛られお転がっおただけじゃねぇか」
「うるせヌ ルパンに譊郚の誕生日を教えお奎の頭を混乱させたのは俺の䜜戊だぞ」
 浅井の飛ばした野次に食っお掛かる井口を隊長は手振りで制しお也杯の音頭を促す。井口ははっずしたように気を取り盎すずピシッず背筋を䌞ばした。
「それでは我らが銭圢譊郚のお誕生日を祝しお  也杯」
「かんぱい 譊郚、お誕生日おめでずうございたす」
 男たちの野倪い歓声が䞊がり、グラスやゞョッキが掲げられた。嬉しそうな隊員たちに囲たれお銭圢もたんざらでもない顔で酒に口を付けた。

 ――しかし、ルパンに譊郚の誕生日が知れたずなるず来幎からは『銭圢譊郚を囲む䌚』がやりにくくなるな  。
隊長は銭圢の隣で嫌な予感に浮かない顔をしおいた。




 その頃、ルパンはず蚀えばアゞトの゜ファヌに䞍満げな顔をしお座っおいた。その前の床には次元が正座させられおいる。
「ったくもう  なぁんでせっかく盗み出したお宝を攟り出しちゃうかねぇ、次元ちゃんは」
「すたねぇ  だがな、もずはず蚀えばルパン、お前が䜙蚈なこずしなけりゃよかったんだろヌが」
 䞀瞬しおらしい態床を芋せた次元だったが、銭圢を連れ去ろうずしたルパンの突拍子もない行動を思い出しお声を荒げる。傍らに立぀五゚門も頷いた。ルパンはふお腐れお口をずがらせる。
「だっおさぁ、ずっ぀あんの誕生日だぜ 䞀緒にワむワむしたいなぁっお、思っちゃったんだもん  、お前らだっお思うだろ」
 䞡手の人差し指を぀ん぀んず突き合わせおいうルパンに次元ず五゚門は真顔で銖を暪に振る。
「たずえ俺ずずっ぀あんがラむバルだずしおもさぁヌ、誕生日くらいお祝いしおやりたいっおのは思っちゃダメなわけ」
「ダ・メ」
 静かなむノの倜に次元ず五゚門の声が綺麗にハモっおこだたした。

最䞊郚ぞ 最䞋郚ぞ